「金(ゴールド)は配当を生まない」――。これはこれまでの投資の常識でした。 しかし、その常識を覆し、金に投資しながら二桁近い分配利回りを狙えるETFが登場しています。それが、FT Vest ゴールド戦略 ターゲットインカム ETF(IGLD)です。
本記事では、高配当投資家として知っておきたいIGLDの仕組み、そしてJEPQなどの株式カバードコールETFと組み合わせることの「真のメリット」について、定量的な視点から詳しく解説します。
1. IGLDの基本概要と「金で稼ぐ」仕組み
IGLDは、その名の通りゴールド(金)を投資対象としながら、同時に「カバードコール戦略」を駆使してキャッシュフローを生み出す、非常にユニークなETFです。
カバードコール戦略の高度な理解
一般的なカバードコールは、対象資産(株や金)を保有しながら、その資産の「コール・オプション(特定の価格で買う権利)」を第三者に売却(ライト)します。この時、権利を売った対価として「オプション・プレミアム」を受け取ることができます。
IGLDの場合、対象資産は「金」です。具体的には以下のプロセスで運用されています。
- 現物ゴールドへの露出: 主にゴールドの現物や、ゴールド価格に連動するETFを保有します。
- コール・オプションの売却: 保有しているゴールドに対して、コール・オプションを売却し、プレミアムを獲得します。
- 分配金の原資: このプレミアムが、投資家への毎月分配金の主な原資となります。
この戦略により、金価格が横ばい、あるいは緩やかに上昇する局面において、通常の金投資では得られない高い利回りを実現します。
なお、現在までの配当金と配当金利回りの推移は以下の通りです。2024年12月に特別分配金がでたため(2024年は金価格が好調だった時期もあり、戦略から得られた収益が積み重なった結果、期末に調整が入った)、利回り推移が上に壊れ気味ですが、その分を差し引いたとしても利回り率はおおよそ右肩上がりで推移しており、現在は12%以上の利回りとなっています。

2. 【定量分析】金と株式の「相関」がもたらすポートフォリオの安定化
投資家として最も注目すべきは、IGLDが「株式ベースの資産」とどのような関係にあるか、という点です。
相関係数から見る補完性
「相関係数」とは、2つの資産がどれくらい同じ動きをするかを示す指標で、1.0に近いほど同じ動き、-1.0に近いほど逆の動き、0に近いほど「無関係(無相関)」であることを示します。
- S&P500(株式) vs ゴールド: 長期的な相関係数は概ね 0.0〜0.1 の範囲にあります。
- なぜこれが重要か: 株式市場がパニックに陥り、株価が急落する場面(例:コロナショックや金融危機)でも、金は独自の需給バランスで動くため、株と一緒に値下がりするリスクを抑えられます。
JEPQ(ナスダック100カバコ)とのシナジー
現在、多くの高配当投資家が保有している「JEPQ」は、ナスダック100指数を対象としたカバードコール戦略です。しかし、JEPQはあくまで「株式」がベースであるため、ハイテク株が暴落すれば、株価(NAV)とともに分配原資もダメージを受けます。
ここでIGLDを組み合わせる意味が出てきます。 株式市場が冷え込み、JEPQの価格が軟調なときでも、金価格が堅調であれば、IGLDは安定したプレミアムを稼ぎ続けることができます。逆に、金価格が低迷しても、経済が好調で株高であればJEPQがポートフォリオを支えます。
このように、「異なるアセットクラス(株と金)」に対して「同じ戦略(カバードコール)」を適用することで、分配金の源泉を多角化し、ポートフォリオ全体のキャッシュフローを劇的に安定させることが可能になるのです。
3. IGLDの投資メリットとデメリット(注意点)
初心者の方にも分かりやすく、かつプロ視点での論点を整理します。
メリット
- 圧倒的な利回り: カバードコール戦略特有の、年率10%を超えるような高い分配金が期待できます。
- 毎月分配型: 生活費の補填や、再投資の効率を高める「毎月分配」を採用しています。
- インフレヘッジ: 「金」という実物資産をベースにしているため、通貨価値が下落するインフレ局面でも資産価値を守りやすい性質があります。
デメリット・リスク
- 上昇益の限定(キャップ): 金価格が短期間に急騰した場合、コール・オプションを売っているために、その上昇益をすべて享受することはできません。
- 新NISA対象外: 現時点では日本の新NISA制度(成長投資枠)の対象銘柄ではないため、特定口座での運用となり、利益に対して約20.315%の課税が発生します。
- 経費率: 通常のゴールドETF(GLDやIAU)に比べ、オプション戦略を管理するための経費率(IGLDは約0.85%前後)は高めに設定されています。
4. 実際の運用戦略:どのような人に向いているか?
IGLDは、万人向けの資産ではありません。以下のようなニーズを持つ投資家に適しています。
- キャッシュフロー重視派: 「金の値上がりを10年待つ」よりも「今すぐ現金(分配金)が欲しい」という方。
- リスク分散を極めたい方: すでにJEPQ、QYLD、XYLDなどの株式カバコETFをメインに据えており、次の分散先を探している方。
- 暴落耐性を高めたい方: ポートフォリオの一部に金由来の収益源を組み込み、市場全体のボラティリティを抑えたい方。
5. まとめ:IGLDで「コツコツ配当生活」を盤石に
ゴールドに「インカム(収益)」という付加価値をつけたIGLDは、これまでのポートフォリオ構築の概念を大きく変える可能性を秘めています。
特に、「株(JEPQ等)」と「金(IGLD)」という、相関の低い2つの柱でカバードコールを運用することは、配当生活の安定性を高めるための極めて論理的かつ強力なアプローチです。
新NISAが使えないという制約はありますが、それを差し引いても「分配金の安定化」という観点から、検討に値する銘柄と言えるでしょう。
出典・参照元
編集後記
※本記事は特定の銘柄の購入を推奨するものではなく、筆者個人の経験と考えに基づいた情報提供を目的としています。投資に関する最終的な判断は、ご自身の状況や目的に合わせて慎重に行っていただくようお願いいたします。

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