こんにちは、こつこつ配当パパです。
この記事では、高配当株投資をしていると「ん?これってどういう意味だっけ?」となりがちな専門用語・略語をまとめました。
私自身まだ理解できないところありますので、適宜更新していこうと思います。
- まとめ:高配当投資家が最優先で確認すべき5指標
- 株価評価指標(Valuation Ratios)
- 株主還元・配当関連指標(Dividend & Shareholder Return Metrics)
- キャッシュフロー関連指標(Cash Flow Metrics)
- 4.収益性・財務健全性指標(Profitability & Financial Health Metrics)
- 株主・配当スケジュール関連用語(Dividend & Shareholder Schedule Terms)
- リスク指標・ボラティリティ関連(Risk & Volatility Metrics)
- 財務指標・成長性関連(Financial & Growth Metrics)
- セクター固有指標(Sector‐Specific Metrics)
- マクロ経済・市場環境関連(Macro & Market Environment)
- 税務関連(Taxation)
- その他高配当投資にかかわる用語
まとめ:高配当投資家が最優先で確認すべき5指標
記事自体かなり長いため、先に最優先で確認すべき5指標を先に記載します。
- 配当利回り(Dividend Yield):いま買うと何%の配当が得られるか、投資判断の出発点。
- 配当性向(Payout Ratio):利益の何%を配当に回しているか。無理な配当か否かを判定。
- 営業キャッシュフローマージン(Operating Cash Flow Margin):本業でどれだけキャッシュを稼いでいるか。配当余力の実態をつかむ。
- フリー・キャッシュフロー利回り(Free Cash Flow Yield):時価総額に対してどれだけキャッシュが残るか。株価水準に対するキャッシュ創出力を評価。
- D/E比率(Debt to Equity Ratio):借入依存度を把握し、金利負担や減配リスクを見極める。
株価評価指標(Valuation Ratios)
1.1 PER(Price Earnings Ratio/株価収益率)
- 定義:株価が1株当たり利益(EPS; Earnings Per Share)の何倍で取引されているかを示す指標。
- 計算式: PER=株価(1株あたり)EPS(1株あたり純利益) \mathrm{PER} = \frac{\text{株価(1株あたり)}}{\text{EPS(1株あたり純利益)}}PER=EPS(1株あたり純利益)株価(1株あたり)
- 解釈:
- PERが高いほど市場が「今後の成長を織り込んでいる」ことを示し、割高と見なされる場合がある。
- 業種によって適正PERは異なる(例:成長セクターなら20~30倍、公益や生活必需品なら10~15倍程度)。
- 同業他社や過去平均PERと比較して割高・割安を判断するのが一般的。
- 留意点:
- EPSがマイナスの場合、PERは算出不能または意味を成さない。
- 会計基準変更や一時的な特別利益・損失がEPSに影響を与えるため、継続的な利益水準を考慮しないと誤判断を招く可能性がある。
1.2 PBR(Price Book-value Ratio/株価純資産倍率)
- 定義:株価が1株当たり純資産(BPS; Book-value Per Share)の何倍で取引されているかを示す指標。
- 計算式: PBR=株価(1株あたり)BPS(1株あたり純資産) \mathrm{PBR} = \frac{\text{株価(1株あたり)}}{\text{BPS(1株あたり純資産)}}PBR=BPS(1株あたり純資産)株価(1株あたり)
- 解釈:
- PBRが1倍未満であれば「帳簿上の純資産を下回る価格」で取引されているとして割安と判断されることがある。
- 資産超過(BPSが負でない)企業であれば、理論上の解散価値を下回る場合「資産バリュー投資」の対象となりうる。
- 留意点:
- 帳簿価額は簿価(取得原価がベース)であり、時価を反映しない。特に不動産や無形資産など、時価が大きく変動する資産を保有している場合は実態と乖離する。
- 自己資本比率が低い企業(BPS自体が小さい)はPBRが高騰しやすい。一方、金融機関では自己資本規制や含み損益の評価基準が異なるため、PBR解釈に業種差がある。
1.3 EV/EBITDA(Enterprise Value/EBITDA倍率)
- 定義:企業価値(EV; Enterprise Value)が営業利益に減価償却費を加えた指標(EBITDA; Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)の何倍かを示すマルチプル。
- 計算式: EV=時価総額+有利子負債−現預金等 \mathrm{EV} = \text{時価総額} + \text{有利子負債} – \text{現預金等}EV=時価総額+有利子負債−現預金等 EV/EBITDA=EVEBITDA \mathrm{EV/EBITDA} = \frac{\mathrm{EV}}{\text{EBITDA}}EV/EBITDA=EBITDAEV
- 解釈:
- 値が低いほど「事業が生み出すキャッシュフローに対して企業価値が割安」と判断されやすい。
- EBITDAは減価償却費や一時的な費用・税金を加味しないため、キャッシュフローの近似値とみなせる。
- 留意点:
- 金融業・保険業など、EBITDAの概念が適用しづらい業種では使いにくい。
- 計算における「有利子負債」「現預金等」の定義が企業ごとに微妙に異なる場合がある。
株主還元・配当関連指標(Dividend & Shareholder Return Metrics)
2.1 配当利回り(Dividend Yield)
- 定義:株価に対する年間配当金の割合を示す。
- 計算式: 配当利回り=年間配当金(1株あたり)株価(1株あたり)×100(%) \mathrm{配当利回り} = \frac{\text{年間配当金(1株あたり)}}{\text{株価(1株あたり)}} \times 100(\%)配当利回り=株価(1株あたり)年間配当金(1株あたり)×100(%)
- 解釈:
- 高配当株投資家にとって最も基本的かつ重要な指標。
- ただし、高い配当利回りが一時的な業績悪化による株価下落によるものであれば、持続可能性を精査する必要がある。
- 留意点:
- 権利確定後の株価下落(権利落ち)によって一時的に利回りが高く見えるケースがある。
- 増配・減配リスク、企業のキャッシュフローや配当性向と合わせて判断すること。
2.2 配当性向(Payout Ratio)
- 定義:企業が稼いだ利益(当期純利益)のうち、どの程度を配当に回しているかを示す割合。
- 計算式: 配当性向(%)=1株あたり配当金(DPS)1株あたり純利益(EPS)×100 \mathrm{配当性向}(\%) = \frac{\text{1株あたり配当金(DPS)}}{\text{1株あたり純利益(EPS)}} \times 100配当性向(%)=1株あたり純利益(EPS)1株あたり配当金(DPS)×100
- 解釈:
- 配当性向が高いほど「利益が配当に振り向けられている」状態となる。一般的に30~50%程度が健全範囲とされるが、業種や成長段階により適正値は異なる。
- 70%以上など極端に配当性向が高まると、将来の減配リスクが増加しやすい。
- 留意点:
- 会計上の特別損益や一時的な特別利益がEPSに影響すると、配当性向が歪む可能性がある。
- 自己株式取得(自社株買い)を含めた総還元性向(Total Payout Ratio)で株主還元全体を評価する手法もある。
2.3 自己株式取得(Share Repurchase/Stock Buyback)
- 定義:企業が市場から自社株を買い戻すことで、流通株式数を減らしEPSを向上させたり、株価を下支えしたりする施策。
- 解釈および影響:
- 1株あたり利益(EPS)が高まることで、株価の下支え要因となる場合がある。
- 自己株式取得に伴い、長期的な株価総還元利回りが向上する可能性。
- ただし、本業投資よりも自社株買いに資金を投じることで将来の成長投資余力が毀損されるリスクもある。
- 留意点:
- 自己株式取得は投資家視点では株価上昇を見込めるが、短期的な需給悪化によっては十分な株価下支えとならない場合がある。
- 取得方法(公開市場買付、TOB、消却予定など)によって会計・税務上の扱いが異なる。
2.4 配当性向(Adjusted Payout Ratio)
- 定義:会計上の特別損益や一過性要因を除外して算出した「調整後EPS」を分母とする配当性向。
- 計算式例: 調整後EPS=当期EPS±一時的な項目(特別利益/特別損失) \mathrm{調整後EPS} = \mathrm{当期EPS} \pm \text{一時的な項目(特別利益/特別損失)}調整後EPS=当期EPS±一時的な項目(特別利益/特別損失) Adjusted Payout Ratio=DPS調整後EPS×100 \mathrm{Adjusted \; Payout\ Ratio} = \frac{\mathrm{DPS}}{\mathrm{調整後EPS}} \times 100AdjustedPayout Ratio=調整後EPSDPS×100
- 解釈:
- 一過性の利益(例:固定資産売却益)や損失(例:構造改革費用など)を除いた上で、本来の「継続的な利益ベース」で配当性向を評価する。
- 高配当株投資家にとって、持続可能性評価の一助となる。
キャッシュフロー関連指標(Cash Flow Metrics)
3.1 営業キャッシュフロー(Operating Cash Flow; OCF)
- 定義:本業(営業活動)によって創出されたキャッシュフローの総額。
- 計算要素:
- 当期純利益
- 減価償却費(非現金費用)の加算
- 運転資本変動(売掛金、買掛金、在庫の増減など)
- その他一時的な費用・収益の調整
- 解釈:
- 企業が継続的にどれだけキャッシュを生み出せているかを示す。
- 高配当企業においては、安定したOCFの確保が配当原資の健全性を測る上で重要。
- 留意点:
- 売上の伸びに対して在庫増加など運転資本が過度に膨張している場合、OCFが悪化する傾向にある。
- キャッシュフロー計算書で「営業活動によるキャッシュ・フロー」に記載される。
3.2 投資キャッシュフロー(Investing Cash Flow; ICF)
- 定義:設備投資、有価証券取得・売却、不動産取得・売却など、投資活動に伴うキャッシュフロー。
- 解釈:
- マイナスであれば「積極的に設備投資している」ことを示す。
- プラスであれば「資産売却や投資回収が進んでいる」など、余剰資金が発生している可能性がある。
- 高配当視点での注目点:
- 設備投資過大によって将来の借入増加や配当原資が圧迫される場合、配当成長にマイナス影響を与えることがある。
- 逆に、不採算事業の売却でキャッシュを稼ぎ、配当に回すケースもあるため、CF明細を確認する必要がある。
3.3 財務キャッシュフロー(Financing Cash Flow; FCF)
- 定義:借入金の増減、社債発行、自己株式取得、配当支払いなど、財務活動に伴うキャッシュフロー。
- 解釈:
- プラスであれば「借入増加や増資、社債発行などで資金調達をしている」ことを示す。
- マイナスであれば「配当支払いや借入返済、自社株買いによる現金流出」など、株主還元や債務軽減に充てている。
- 留意点:
- 配当支払いはここでマイナス計上されるため、高配当企業ほど大きくマイナスとなる傾向がある。
- 財務キャッシュフローが恒常的にマイナスの場合、資金繰りの健全性を確認する必要がある。
3.4 フリー・キャッシュフロー(Free Cash Flow; FCF)
- 定義:営業キャッシュフローから投資キャッシュフロー(主に設備投資額)を差し引いた残額。
- 計算式: FCF=OCF−設備投資額(CapEx) \mathrm{FCF} = \mathrm{OCF} – \mathrm{設備投資額}(\mathrm{CapEx})FCF=OCF−設備投資額(CapEx)
- 解釈:
- 企業が事業を維持・成長させるために必要な投資を除いた後に手元に残るキャッシュ。
- 持続的に高いFCFを稼げる企業ほど、配当支払いや自社株買い余力が高いとされる。
- 留意点:
- 設備投資が一時的にピークを迎えている年は、一時的にFCFがマイナス化する可能性がある。
- 「Adjusted FCF」として、権利売却や資産売却益など一過性の要素を除く場合もある。
3.5 FCF利回り(Free Cash Flow Yield)
- 定義:株価に対するFCFの割合を示す指標。
- 計算式: FCF利回り=FCF(全体)時価総額×100 \mathrm{FCF利回り} = \frac{\text{FCF(全体)}}{\text{時価総額}} \times 100FCF利回り=時価総額FCF(全体)×100 ※FCFを時価総額ベースや1株あたりベースで計算する方法がある。
- 解釈:
- FCF利回りが高いほど「配当支払いや自己株買いなど株主還元余力が高い」可能性がある。
- 特に利益計上ベースのPERと比較し、キャッシュ創出力を重視する投資家には重要視される。
- 留意点:
- FCF自体が急激に変動する業種・企業はFCF利回りの解釈が難しい。
- 計算に用いるFCFの定義(CapExの範囲設定など)によって数値が変わる。
4.収益性・財務健全性指標(Profitability & Financial Health Metrics)
4.1 EPS(Earnings Per Share/1株あたり利益)
- 定義:当期純利益を発行済み株式数で割ったもの。
- 計算式: EPS=当期純利益−優先株配当平均発行済株式数 \mathrm{EPS} = \frac{\text{当期純利益} – \text{優先株配当}}{\text{平均発行済株式数}}EPS=平均発行済株式数当期純利益−優先株配当
- 解釈:
- 株主に帰属する純利益ベースでの1株あたり利益。
- 投資家はEPSの推移を見ることで、企業の収益拡大を評価する。
- 留意点:
- 希薄化要因(株式発行、ストックオプション行使など)によりEPSが希薄化する場合がある。
- 特別損益や為替影響がEPSを一時的に歪ませる可能性があるため、調整後EPSも参照される。
4.2 ROE(Return on Equity/株主資本利益率)
- 定義:企業が株主資本をどれだけ効率的に活用して利益を生み出しているかを示す指標。
- 計算式: ROE=当期純利益株主資本(自己資本)×100(%) \mathrm{ROE} = \frac{\text{当期純利益}}{\text{株主資本(自己資本)}} \times 100(\%)ROE=株主資本(自己資本)当期純利益×100(%)
- 解釈:
- 高いほど「株主資本を有効活用している」ことを示し、投資魅力度が高いとされる。
- 一般に10%以上を良好水準とする企業が多いが、業種・競争環境によって適正レンジは異なる。
- 留意点:
- 自己資本が薄い(レバレッジが高い)企業は、借入金利よりも高い利益を上げていればROEが高く見えるが、リスクも増大する。
- 自己資本比率が極端に低い企業は、ROE高騰の裏に財務リスクが潜む場合がある。
4.3 ROA(Return on Assets/総資産利益率)
- 定義:企業が総資産をどれだけ効率的に活用して利益を生み出しているかを示す指標。
- 計算式: ROA=当期純利益総資産×100(%) \mathrm{ROA} = \frac{\text{当期純利益}}{\text{総資産}} \times 100(\%)ROA=総資産当期純利益×100(%)
- 解釈:
- 総資産を用いるため、資産効率の観点で企業の収益性を測定する。
- ROAが高いほど「資産回転率が高い」ことを示すが、業種によって資産構成が大きく異なるため一律比較は不可。
- 留意点:
- 資産の減損や評価損など、一時的に総資産が大きく変動するとROAが大きく変動する。
- 業種によって有形固定資産比率が異なるため、同業他社比較が前提となる。
4.4 D/E比率(Debt to Equity Ratio/負債資本倍率)
- 定義:企業の総負債(Interest-bearing Debt)を株主資本(自己資本)で割ったもの。
- 計算式: D/E比率=総負債(有利子負債含む)自己資本 \mathrm{D/E比率} = \frac{\text{総負債(有利子負債含む)}}{\text{自己資本}}D/E比率=自己資本総負債(有利子負債含む)
- 解釈:
- D/E比率が高いほど「財務レバレッジが効いている」状態を示し、借入金依存度が高い企業と判断される。
- 高配当銘柄でも、D/Eが高すぎると金利負担増や景気悪化局面での利払い圧迫が懸念される。
- 一般に1.0倍未満を健全とする企業が多いが、業種により適正レンジは異なる(例:インフラ・公益企業は大きな借入を抱えるケースあり)。
- 留意点:
- 分母の自己資本に含まれる評価差額(含み損益)が大きい場合、実質的な資本構成と乖離する可能性がある。
- 連結財務諸表ベースか単独ベースかによって数値が異なるため注意。
4.5 インタレスト・カバレッジ・レシオ(Interest Coverage Ratio)
- 定義:税引前利益(EBIT; Earnings Before Interest and Taxes)が支払利息の何倍あるかを示す指標。
- 計算式: Interest Coverage=EBIT支払利息 \mathrm{Interest\,Coverage} = \frac{\text{EBIT}}{\text{支払利息}}InterestCoverage=支払利息EBIT
- 解釈:
- 値が高いほど「事業利益で利払いを十分にカバーできている」状態を示し、安全性が高い。一般に3倍以上を目安とする。
- 高配当企業が高レバレッジ戦略をとっている場合、この指標を見ずにD/Eだけで判断するとリスクを見落とす可能性がある。
- 留意点:
- 支払利息が一時的に膨らむ(短期借入金増加など)と急激に低下する場合があるため、動向をチェックする必要がある。
株主・配当スケジュール関連用語(Dividend & Shareholder Schedule Terms)
5.1 権利確定日(Record Date)
- 定義:その日の終値で株主名簿に名前が記載されている株主が配当や株主優待を受け取れる権利を有する日。
- 特徴:
- 日本株の場合、権利確定日は「定時株主総会基準日(通常3月末・9月末)」が多い。
- 米国株は「配当落ち日(Ex-Dividend Date)の翌営業日」が権利確定日に相当する。
- 留意点:
- 権利確定日の2営業日前が「権利付き最終売買日(Last Trading Day)」となり、この日に株を保有していないと権利が得られない。
- 米国株では配当落ち日の株価調整が起こるため、配当を狙った短期売買はリスクが高い。
5.2 権利落ち日(Ex-Dividend Date)
- 定義:この日に株を購入しても直近配当を受け取れない日。
- 特徴:
- 権利付き最終日(Last Trading Day)の翌営業日が権利落ち日となる。
- 権利落ち日には理論的に「配当相当額」だけ株価が下落するとされるが、実際の下落は需給や市場環境によって変動する。
- 留意点:
- 配当金を獲得してすぐ売却すると、権利落ち日に株価が下がる分を配当額で相殺できない場合がある。
- 確定申告や外国税額控除と絡めた米国株配当戦略を立てる際には、権利落ち日の扱いを理解する必要がある。
5.3 配当支払日(Payment Date)
- 定義:実際に株主名簿に記載された株主に配当金が支払われる日。
- 特徴:
- 権利確定日から数週間~数か月後に設定される。
- 日本株の場合、期末配当は定時株主総会決議後(6月頃)に支払われる。中間配当は9月頃が一般的。
- 米国株の場合は四半期ごとに設定され、各企業のIRサイトで個別に発表される。
- 留意点:
- 配当計上日に関する税務処理(源泉徴収や翌期の確定申告での取り扱い)を把握しておく。
5.4 権利付き最終売買日(Last Trading Day)
- 定義:権利確定日まで株主として保有するために、最後に株を買える最終売買日。
- 特徴:
- この日を過ぎると、翌営業日の権利落ち日には配当権利が得られなくなる。
- 日数のカウントは取引所ルールに基づき、T+2決済のケースが多いため、権利確定日の2営業日前を意識する。
- 留意点:
- 分配金・配当金を目的とした売買をする場合、株価変動リスク(権利落ちによる価格下落など)を考慮する。
リスク指標・ボラティリティ関連(Risk & Volatility Metrics)
6.1 β(ベータ:Beta Coefficient)
- 定義:個別銘柄の株価変動が市場全体(ベンチマーク指数)に対してどれだけ連動して動くかを示す指標。
- 計算式イメージ: β=Cov(銘柄収益率,市場収益率)Var(市場収益率) \beta = \frac{\mathrm{Cov}(\text{銘柄収益率}, \text{市場収益率})}{\mathrm{Var}(\text{市場収益率})}β=Var(市場収益率)Cov(銘柄収益率,市場収益率)
- 解釈:
- β=1 → 市場と同じ変動幅・方向
- β>1 → 市場変動以上に値動きをする(ハイリスク高リターン)
- β<1 → 市場変動以下の値動き(ディフェンシブ)
- 高配当株視点:
- 一般的に公益株・生活必需品株はβが1未満のディフェンス銘柄とされることが多い。
- 高βの高配当株は大きなリターンを狙えるが、景気後退局面で大幅下落するリスクもある。
- 留意点:
- 計算に用いる期間(1年、2年、5年など)やマーケットベンチマーク(日経平均、TOPIX、S&P500など)によってβ値は大きく異なる。
- 過去のデータに基づくため、将来の変動性を保証するものではない。
6.2 ボラティリティ(Volatility)
- 定義:資産価格の変動(リターンの分散・標準偏差)の大きさを示す指標。
- 計算式イメージ: σ=1n−1∑i=1n(ri−rˉ)2 \sigma = \sqrt{\frac{1}{n-1} \sum_{i=1}^{n} (r_i – \bar{r})^2}σ=n−11i=1∑n(ri−rˉ)2 ただし、rir_iri は期間中のリターン、rˉ\bar{r}rˉ は平均リターン。
- 解釈:
- ボラティリティが高いほど価格変動が激しく、リスクが大きい。
- 年率標準偏差ベース(Annualized Volatility)で表すことが一般的。
- 留意点:
- ヒストリカルボラティリティは過去データに基づき、インプライド・ボラティリティ(オプション市場の期待変動率)とは異なる。
- 下落相場で急上昇しやすいため、高配当株投資時にリスク許容度を測る参考になる。
6.3 シャープレシオ(Sharpe Ratio)
- 定義:投資ポートフォリオの超過リターン(リスクフリーレートを差し引いたリターン)を、そのリスク(標準偏差)で割った指標。
- 計算式: Sharpe Ratio=Rp−Rfσp \text{Sharpe Ratio} = \frac{R_p – R_f}{\sigma_p}Sharpe Ratio=σpRp−Rf
- RpR_pRp:ポートフォリオリターン
- RfR_fRf:リスクフリーレート(例:日本国債利回り、米国国債利回り)
- σp\sigma_pσp:ポートフォリオの標準偏差
- 解釈:
- 数値が高いほど「リスクを取って得たリターン効率が良い」ことを示す。
- ≧1.0 は優秀、≧0.5 はまずまず、<0.5 はリスクに見合ったリターンを得られていない可能性あり。
- 高配当株視点:
- 高配当株単体よりも「複数銘柄 or セクター分散+ETF」を組み合わせたポートフォリオ全体で評価することが一般的。
- 配当利回りとボラティリティのバランスを検証するのに有用。
財務指標・成長性関連(Financial & Growth Metrics)
7.1 売上高営業利益率(Operating Margin)
- 定義:売上高に対する営業利益(EBIT)の割合。
- 計算式: 売上高営業利益率=営業利益(EBIT)売上高×100(%) \mathrm{売上高営業利益率} = \frac{\text{営業利益(EBIT)}}{\text{売上高}} \times 100(\%)売上高営業利益率=売上高営業利益(EBIT)×100(%)
- 解釈:
- ビジネスモデルの収益性を示す。
- 10%以上を優良とする業種もあるが、業種特性によって標準値は異なる。
- 留意点:
- 原材料費や販管費構造の変動が大きい業種(素材、エネルギーなど)は営業利益率が低くなる傾向がある。
- 高配当企業の場合、安定的に営業利益率を維持できるかどうかが配当の安定性に直結する。
7.2 売上高純利益率(Net Profit Margin)
- 定義:売上高に対する当期純利益の割合。
- 計算式: 売上高純利益率=当期純利益売上高×100(%) \mathrm{売上高純利益率} = \frac{\text{当期純利益}}{\text{売上高}} \times 100(\%)売上高純利益率=売上高当期純利益×100(%)
- 解釈:
- 最終的な収益性を示し、投資家に還元される利益余力を測る。
- 高配当企業では純利益率を保ちながら配当を継続してきた実績があるかをチェックする。
- 留意点:
- 一過性の特別損益が混入すると純利益率が大きく変動するため、調整後純利益率も参照するとよい。
7.3 EPS成長率(EPS Growth Rate)
- 定義:一定期間における1株あたり純利益(EPS)の成長率。
- 計算式: EPS成長率(%)=当期EPS−前期EPS前期EPS×100 \text{EPS成長率(\%)} = \frac{\mathrm{当期EPS} – \mathrm{前期EPS}}{\mathrm{前期EPS}} \times 100EPS成長率(%)=前期EPS当期EPS−前期EPS×100
- 解釈:
- EPSが継続的に伸びている企業ほど、将来的な増配余力が高いと期待される。
- 高配当投資家にとって「配当+株価上昇によるトータルリターン」を狙う上で重要。
- 留意点:
- 景気サイクルやセクター特有の循環業種(自動車、素材など)はEPS成長率が不安定になりやすい。
- 為替影響(円高・円安)がEPSに与える影響も確認する必要がある。
セクター固有指標(Sector‐Specific Metrics)
8.1 REIT(不動産投資信託)関連
- FFO(Funds From Operations)
- 定義:REITが本業で稼いだキャッシュベースの収益を示す指標。
- 計算式例(米国式): FFO=当期純利益+減価償却費・償却費−不動産売却益 \mathrm{FFO} = \text{当期純利益} + \text{減価償却費・償却費} – \text{不動産売却益}FFO=当期純利益+減価償却費・償却費−不動産売却益
- 解釈:
- キャッシュフローに近い収益力を測る上で有用。
- 高配当REITはこのFFOに対する分配金(DPS)が適切かを確認する必要がある。
- 留意点:
- 減価償却費の扱いが企業ごとに微妙に異なるため、同業他社間で比較する際は注意。
- AFFO(Adjusted Funds From Operations)
- 定義:FFOをさらに調整し、実質的な維持投資(維持原状回復費用)や非現金項目を除外した指標。
- 計算式例: AFFO=FFO−維持的CapEx−賃貸準備金(Reserve)などの調整 \mathrm{AFFO} = \mathrm{FFO} – \text{維持的CapEx} – \text{賃貸準備金(Reserve)などの調整}AFFO=FFO−維持的CapEx−賃貸準備金(Reserve)などの調整
- 解釈:
- REITが将来も安定的に稼ぎ続けるために必要な投資を差し引いた後の「本質的な自由キャッシュフロー」を示す。
- 配当の持続可能性評価において、AFFOカバレッジ比率(AFFOに対する配当割合)を見ることが多い。
- AFFOカバレッジ比率(AFFO Payout Ratio)
- 定義:AFFOに対する分配金(DPS)の割合。
- 計算式: AFFO Payout Ratio=DPSAFFO×100 \mathrm{AFFO\,Payout\,Ratio} = \frac{\mathrm{DPS}}{\mathrm{AFFO}} \times 100AFFOPayoutRatio=AFFODPS×100
- 解釈:
- 100%以下が理想視されるが、高配当追求型REITでは100%超過でも一時的に許容される場合がある。
- 長期的にはAFFO以上に分配すると、自己資本比率の低下や借入依存度の増加につながるため注意。
8.2 金融セクター関連
- ROA(Return on Assets/総資産利益率)
- 金融業ではROAが一般企業より低くても許容されるため、同行比較が重要。
- ROE(Return on Equity/株主資本利益率)
- 同業他社比較や自己資本比率を考慮したROE分析が必要。
- NPL比率(Non-Performing Loan Ratio/不良債権比率)
- 金融機関が保有する貸出金のうち、不良債権化した割合を示す。
- 不良債権比率が高いほど、将来の貸倒リスク(信用コスト増加)が懸念される。
- Tier1比率(自己資本比率)
- 規制上の自己資本比率指標。バーゼル規制に基づき算出される。
- 高いほど銀行の財務健全性が高いと判断されるが、過度に高いと収益性が抑制される場合もある。
マクロ経済・市場環境関連(Macro & Market Environment)
9.1 金利リスク(Interest Rate Risk)
- 定義:金利変動によって株価や債券価格、資金調達コストが影響を受けるリスク。
- 高配当視点での影響:
- 金利上昇局面では利回りの高い代替投資先(国債や預金)が魅力となり、高配当株の株価が下落しやすい。
- 特に配当利回りが市場金利に近づくと、配当確保のリスク(減配懸念)が増す。
9.2 インフレ率(Inflation Rate)
- 定義:物価全体の上昇率。消費者物価指数(CPI)や企業物価指数(PPI)などで測定される。
- 高配当視点での影響:
- インフレが進行すると企業のコスト負担(人件費、原材料費など)が増加し、利益率が悪化して配当余力を圧迫する可能性がある。
- ただし、インフレ連動債やインフレ耐性のあるセクター(エネルギー、素材、公益など)は相対的に耐性が強い。
9.3 為替リスク(Foreign Exchange Risk)
- 定義:外貨建て資産・売上高・配当などが為替変動によって円換算値が変動するリスク。
- 高配当視点での影響:
- 米国株など外貨建て配当の場合、ドル→円交換レート次第で円ベースの配当金額が上下する。
- 為替ヘッジの有無やコストを考慮しないと、実質的な配当利回り評価が誤る可能性がある。
9.4 クレジットスプレッド(Credit Spread)
- 定義:国債利回り(リスクフリーレート)と企業債利回り(同期間)の金利差。
- 解釈:
- スプレッドが拡大すると「市場が企業の信用リスクを高く見積もっている」状態を示す。
- 高配当株投資家にとっては、経営破綻リスクや借入金利負担増加リスクを警戒する材料となる。
税務関連(Taxation)
10.1 源泉徴収税(Withholding Tax)
- 定義:外国株配当などに対して、支払い時点で自動的に差し引かれる税金。
- 日本人投資家向け注意点(米国株の場合):
- 米国株配当には通常10%(日本・米国租税条約適用後)の源泉税がかかる。In Franklinケースなど源泉税率が異なる場合もあるため、W-8BEN提出後の税率をIRサイトで確認する。
- 確定申告で「外国税額控除」を適用すれば、支払済みの米国源泉税を一定額取り戻せる。
10.2 特定口座(源泉徴収あり/なし)・一般口座
- 定義:日本国内で株式売買を行う際、証券会社で選択できる口座区分。
- 「特定口座(源泉徴収あり)」:売却益・配当金にかかる税金を証券会社が自動計算・徴収。確定申告不要(一定条件下)。
- 「特定口座(源泉徴収なし)」:確定申告は不要だが、税金計算は自ら行う必要がある。
- 「一般口座」:すべて自分で損益計算→確定申告が必要。
- 高配当投資家向け留意点:
- 特定口座(源泉あり)なら配当金も自動で税額計算・徴収されるため、米国株の源泉徴収(10%)との二重課税を考慮しつつ確定申告で還付手続きを行う必要がある。
- NISA口座での非課税枠を活用することで、国内株・ETFの配当金は非課税になるが、米国株の配当に関しては米国側の源泉税は免除されない(あくまで日本国内の課税分が免除される)。
10.3 配当控除(Dividend Deduction)
- 定義:日本国内の上場株式配当金等に対して、総合課税を選択した場合に受けられる税額控除制度。
- 解釈:
- 配当金を総合課税で申告し、一定の要件を満たせば、課税対象所得から一部を控除できる。
- 分離課税(源泉徴収済)で配当を受け取った場合は配当控除は適用できない。
- 留意点:
- 配当控除を適用するか否かは、他の所得や所得税率次第で最適選択が変わるため、税務シミュレーションが必要。
その他高配当投資にかかわる用語
11.1 キャッシュカバー率(Cash Coverage Ratio)
- 定義:1株あたり配当金(DPS)をキャッシュフロー(1株あたり)の観点からどれだけカバーできるかを示す指標。
- 計算式例: キャッシュカバー率=1株あたり営業キャッシュフロー(OCF per share)DPS×100 \mathrm{キャッシュカバー率} = \frac{\text{1株あたり営業キャッシュフロー(OCF per share)}}{\mathrm{DPS}} \times 100キャッシュカバー率=DPS1株あたり営業キャッシュフロー(OCF per share)×100
- 解釈:
- 100%以上であれば「営業キャッシュフローで配当金を賄えている」状態と見なせる。
- 高配当株の多くは営業キャッシュフローも重視されるため、この比率を併せて確認することが望ましい。
11.2 トータル・リターン(Total Return)
- 定義:株価値上がり益(キャピタルゲイン)+配当金(インカムゲイン)を合わせた総合的な投資収益率。
- 計算式イメージ: Total Return=期末株価−期首株価+配当金累計期首株価×100 \mathrm{Total\,Return} = \frac{\text{期末株価} – \text{期首株価} + \text{配当金累計}}{\text{期首株価}} \times 100TotalReturn=期首株価期末株価−期首株価+配当金累計×100
- 解釈:
- 単純に配当利回りだけでなく、市場全体や同業他社との総合的なパフォーマンス比較に使う。
- 配当金を再投資(DRIP: Dividend Reinvestment Plan)した際の効果を考慮する場合、「再投資前後」のトータルリターンにも言及する。
11.3 DRIP(Dividend Reinvestment Plan/配当再投資)
- 定義:配当金を現金受け取りせず、そのまま同銘柄(または会社指定銘柄)を購入する制度。
- 解釈:
- 手元キャッシュを使わずに投資残高を増やせるため、長期的な複利効果を高める効果がある。
- 米国株には企業が直接提供するDRIPプログラムがある場合があるが、日本の証券会社経由では対応していないケースが多い。
- 留意点:
- DRIPを利用する場合、配当受け取り時の源泉徴収税は適用されるため、税務上の特典はない。
- 機械的に再投資されるため、配当が出たタイミングで必ず買付が行われる(ドルコスト平均法的効果)。
11.4 配当クラフティング(Dividend Crafting)
- 定義:配当金が支払われるタイミングを利用して、売買タイミングを「配当確定前後」に集中させることで、税負担や価格変動を最適化しようとする戦略的売買手法。
- 解釈:
- 例えば、「配当落ち日直前に購入し配当を取った後、権利落ち日に売却する」という戦略は理論的には「配当金を得るが、株価下落分も被る」ため、トータルリターンがマイナスとなることが多い。
- 配当クラフティングをMechanics(仕組み論)として理解し、一時的な株価下落と税負担(源泉徴収等)を勘案すると、大概は手数料負けや税負担増でインカムゲインが相殺されるケースが多い。
- 留意点:
- 株価変動(需給・市場心理)によっては、権利落ち日の下落幅が理論値より小さく済む場合もあるが、安定的な収益戦略とは言い難い。
- 短期売買に伴う売買手数料や信用取引コスト、税務申告の手間を考慮すると、戦略的に使うメリットは限定的。
11.5 株式分割(Stock Split)/株式併合(Reverse Split)
- 定義:
- 株式分割:既存株式を分割して発行済み株式数を増やし、流動性を高める。例:1株を2株にする「2-for-1 Split」。
- 株式併合:逆に株式数をまとめて減らし、1株当たり株価を引き上げる。例:10株を1株にする「1-for-10 Reverse Split」。
- 高配当視点での影響:
- 分割・併合そのものでは企業価値は変わらないが、株価水準や流動性に影響し、需給・投資家心理を変動させる要因となる。
- 特に米国高配当株投資家は、DRIPプランにおける再投資口数や座席確保(最低単位)に与える影響を考慮する。
- 留意点:
- 株式分割を行うとPERやPBRなどの指標は分母分子ともに分割後の株数ベースで自動調整されるため、見かけ上の値に変化はない。
- 株式併合は1株あたり利益や配当がまとめられるため、高配当連続性の評価に注意が必要。
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